BRAHMAN、Hi-STANDARD、COCOBAT、WRENCH。
彼らは多くのバンドマンからリスペクトされ、今なおアンダーグラウンドシーンを最前線で盛り上げ続けている。そんな彼らが敬愛してやまない伝説のバンドをご存知だろうか。1990年代に活躍をしたそのバンドの名前は「NUKEY PIKES」。
彼らは、ライブが暴動のようになっていたハードコアシーンのど真ん中で、「ケガをする人もケガをさせる人も出てほしくないです。動かなくても頭の中はハードコア」と言葉を投げかけた。不良・暴力的といったイメージがついていた日本のパンク/ハードコア・シーンに真正面から中指を立て、大きな風穴を開けたのだ。
しかも、むちゃくちゃかっこいいハードコアを奏でながらね。
ブラフマンのTOSHI-LOWさんは、2011年に再発売された1stアルバム「NUKEY PIKES」の帯に「ガラガラのライブハウスのステージ上でNUKEY PIKESの存在が心の支えだった」とコメントを添えている。
何故こんなにも数々のバンドマンから敬愛され続けるのか。彼らのライヴ音源や超レア盤の音源を収録した特別盤である「ザ・クロニクルショット」を紹介しながら、を話していこうと思う。
この記事の目次
「ザ・クロニクルショット」導入動画
ザ・クロニクルショットの中かから「Nuked Up Blues」を紹介。本曲は記念すべき1stアルバムに収録されている曲だ。初期の彼らの特徴である、ブルース調のギターリフが曲を盛り上げる。ハードコアだがゴリゴリのハードコアだけではない。彼らのバンドの深さを感じてもらえるのではなかろうか。
本曲の歌詞には「原子力発電に対して反対の意見を持っていても日々の生活でそれを使用していれば、つまりその人は、賛成である立場の人と同じことになる。」というフレーズがある。このように、NUKEY PIKESは常に聴き手に何かを考えるきっかけを提示する。答えは言わず、押し付けない。
NUKEY PIKESについて
メンバー
via: 2YOU MAGAZINE
不動の4人で活動をしていたNUKEY PIKES。
- 吉本典正さん (Ba.)
- 岩田有史さん(Gt.)
- 松岡至さん (Dr.)
- 三橋厚志さん (Vo.)
三橋厚志さん(Vo.)はNUKEY PIKES解散後、海外に写真を撮りに行っていると雑誌で読んだ。公式に発表するつもりはないとのことだが、どんな写真かむちゃくちゃ見たい。
こんな凄いバンドのフロントマンは写真でどんな表現をするのだろう。
NUKEY PIKES概要
NUKEY PIKESは1989年に結成され、千葉や東京を拠点に活躍をしたハードコアバンドである。1997年に千葉で実施されたライブを最後に解散している。
1990年にドイツのレーベルからEPをリリース。1991年にはリーダーの吉本典正さん(Ba,)が大好きだったHERESY(世界中のハードコア・パンクスへ多大な影響を与えた重要なUKハードコアバンド)のメンバーであるカルブと日本で偶然出会ったことにより、彼のレーベルから1stアルバム「NUKEY PIKES」をリリースすることとなる。
その後、1992年に曲も追加され、ジャケットワークも変更された日本盤がリリースされた。逆輸入に近いかたちで彼は日本のパンク/ハードコアシーンに飛び込んだのだ。当時UKハードコアの色が強かった日本のハードコアシーンの中で、米国ハードコアからの影響を全面に出していたNUKEY PIKESは異端な存在であった。
そして、NUKEY PIKESは音楽性とバンドのスタンスに大きな特徴があるバンドであった。
NUKEY PIKESの音楽性
彼らの音楽性はハードコアという芯に、ロック、ブルース、ジャズ、ファンクなどをミックスする柔軟で型にはまらないものだった。吉本典正さん(Ba,)はインタビューで「僕は差別はしないんです。人種差別はしないから音楽の差別はしない」と語っている。
ぼく自身、彼らのジャンル関係なく良いものは良いというその姿勢から、いかに偏見を持って音楽を聴いていたかということを思い知らされた。
NUKEY PIKESのスタンス
世界と同様に、日本のハードコアシーンも80年代から伝統的な暴力的イメージが存在していたが、彼らのライブはそんな保守的な伝統に相反していた。三橋厚志さん(Vo.)の「にゅーきーぱいくす、はじめます」というほのぼのとした掛け声から始まるライブは、曲間もにこにことした顔でポップなMCが入る親しみやすいものだった。音楽性だけでなくスタンスも型にはまらなかったのだ。
しかし、思想という点ではとても強いものがあった。歌詞カードには、”ウィ・ヘイト”としてドラッグス、戦争、トレンディ、暴力、商業主義、右翼、仕事、ビッゲスト・ジャパニーズ・ハードコアレーベル・強制宗教・動物虐待・過剰伐採などが書かれている。
当時も政治のことを語るバンドは存在していたが、ここまで多くを語るバンドは他にいなかった。そして彼らは語るだけでなく行動し続けたのだ。メンバーの中では動物虐待を掲げるにあたり動物性蛋白質取らない人もいた。
ただ、誤解してほしくないのは、彼らはストレート・エッジではないし、その思想を押し付けたり、強制したり、説教したり、怒鳴りつけたりはしなかった。あくまで、歌詞や行動によるきっかけや提案の提供であり、答えを出すのは聴き手である。ストレート・エッジや影響を受けたバンド達から得たものを、彼らなりに消化してハードコアとして表現していたのだ。これが他のバンドとの大きな違いじゃないかと思う。
このような音楽性やスタンスから、保守的なハードコアシーンからはNUKEY PIKESはハードコアじゃないと罵られることも多かった。しかし、三橋厚志さん(Vo.)は「あいつはニセモノだとか言われようが、あいつはハードコアじゃないと言われようが関係ないですよ」と語っている。彼らの中ではそもそも、ハードコアであるとかハードコアでないとかそういう次元のことは関係なかったというか興味がなかったのかなとすら感じる。でも解散から20年たった今、アンダーグラウンドシーンへ与えた影響を考えるとハードコアじゃないというのは間違っていると断言できる。
NUKEY PIKESは、このような音楽性・スタンスから数多くのバンドマンに今なお敬愛され続けているのだ。そして、BRAHMANやKEN YOKOYAMAさんなどはそのマインドを色濃く引き継いでいるように感じる。3.11以降の彼らの活動を見ていると凄く分かるのではないだろうか。
ザ・クロニクルショットについて
解散後の1998年にリリースされたフルアルバムである。吉本典正さん(Ba,)と岩田有史さん(Gt.)がセレクションしたお宝トラック集になっている。各アルバムのリミックス曲や貴重な配布CDの収録曲、ライブテイク、未発表曲などが収められている。
なんだかアレンジがちょっとふざけていたりする遊び心が、ライブを見ているような感覚になれるので個人的にこのアルバムが好きだったりする。
▼収録曲一覧
1. | If You Love Something Set It Free(Remix) |
2. | The Chamber Of Rising Horror |
3. | YOYOGI RULES |
4. | Never trust the Monkey |
5. | Easy Love Baby(Remix) |
6. | Let’s Get Another Place |
7. | Nuked Up Blues |
8. | Take The Funny Way |
9. | Take The Funny Way2 |
10. | 心無い先見性 |
11. | 5% |
12. | Naked Pride |
13. | Capitalism |
14. | Isolation Drift In New World |
15. | Hunt |
16. | KITCHEN DUB |
▼1曲目 – If You Love Something Set It Free
▼5曲目 – Easy Love Baby
リリース情報
入手困難になっていた、彼らのCDが、2011年にライブ映像などのDVD付きで再発売されている。NUKEY PIKESに興味をもった方がいたら調べてみてほしい。
まとめ
今回はその音楽性やスタイルから数多くのバンドマンから敬愛され続けるバンド NUKEY PIKESを紹介してきました。日本にもこんか凄いバンドがいたことがもう奇跡のようで。ぼくなんかが語っていいのかと思うほど大好きなバンドです。こんなバンドはもう現れないのではないかと思う。愛が強すぎて凄い長くなっちゃった。
人生における芯を持ったうえでの柔軟性は彼らから教わった。難しくてなかなか体現できないけど・・・(笑)
おまけ。
NUKEY PIKESがカバーしたABBAのDancing Queenを紹介。カッコよすぎるよ。
タグ一覧:BRAHMAN, HI-STANDARD, NUKEY PIKES
三橋さんの元同僚です。三橋さん今は会社員として働かれてます。今ははなまるうどんで開発してるようです。前日有吉弘行のダレトクという番組に普通に出演されてました。